仕組債の仕組み(仕組債とは)
「仕組債」とはデリバティブが組み込まれた債券ですが、為替や株式、金利などの指標や値段を参照してクーポン(利率)が変動するという特徴があります。
「仕組債」とはデリバティブが組み込まれた債券の総称です。
仕組債は固定金利やLIBOR金利(ロンドン銀行間取引金利)に連動する普通の金融商品とは違って、別の指標や値段を参照して金利が変動するという特徴を持っています。
参照する指標や価格は大まかに分けて、
に類型化することができます。その中でも多いのが、為替型、株式型の商品です。
投資対象があまり変動しなければ10~20%もの高金利を得ることができます。しかし投資対象がある程度上昇すれば期限前償還されて、高金利が得られる期間は短いものとなります。
そしてもし期限前償還されない場合は、最長で30年(FXターン債の場合)もの間資金が塩漬けされた上に、金利はほとんどつかず、元本が大きく減ってしまうことになります。
ですからマーケットの変動によって、短期間に少額のリターンを得るか、長期に渡って大きな損失をこうむるかのどちらかになるという、実質2者択一の投機といったイメージです。
仕組債の問題は、本来の債券の価値よりも低い価格で販売されているケースが往々にしてあることです。
メリットとしてうたわれている高クーポンが実際に実現する可能性は思いのほか低く、その割には損失が発生したときの損失額は大きくなるという商品構造のものが多く存在するようです。
では、具体的にどこがどうおかしな商品なのか、商品を購入された方には自分ではなかなか分かりません。
当社による契約分析の結果をご覧になると、その中身にびっくりされますし、「初めから知っていれば購入しなかった」とおっしゃる方がほとんどです。
それが、問題のある場合の仕組債の一般的な傾向です。以下に、カテゴリー別に仕組債を概観してみましょう。
為替型
外国通貨に連動してクーポンや償還元本が変動する商品です。
「為替リンク債」や「通貨選択型ターゲット償還条項付きデュアル債」などと呼ばれています。
このタイプの仕組債でポイントとなるのは、ここのところ日本と海外の通貨の間には、やや縮小してきたものの、ずっと「大きな金利差」があるということです。したがって金利差を利用した裁定取引のチャンスが発生しますから、為替の先物予約は将来に行けば行くほど円高水準で契約できることになります。この原理を活用した商品設計が行われています。
パワーリバースデュアル債(PRDC債)
「購入代金及び償還額の通貨」と「利払いの通貨」が異なる債券です。
年利10%程度の高クーポンが謳われていますが、円高になると低クーポンまたはゼロクーポンとなり、満期償還時には為替差損が生じる外貨で償還されるという仕組みとなるような商品が代表的な例です。
また、投資期間が最長30年ととても長いのも特徴的です。一定の条件が満たされると元本が早期償還される条項がついているものが一般的です。すなわち、早期償還条件を満たせば短期間高クーポンを受取って元本が満額償還されるが、そうでなければ超長期に渡って低クーポンまたはゼロクーポンとなり、その上目減りした外貨で償還されるという商品です。
FXターン債
パワーリバースデュアル債とよく似た商品ですが、受け取るクーポンが一定の金額に達したら早期償還するという条項を盛り込んだ仕組債を特にFXターン債と呼びます。
株式型
個別企業の株価や日経平均株価に連動してクーポンや償還元本が変動する商品です。
他社株転換債(EB債=エクスチェンジャブル・ボンド)
契約書には「他社株転換型債券」とか「他社株転換債」と書かれています。
対象株式の価格が一定水準を下回ると、償還金が支払われるのではなく、他社株式で元本が償還される仕組債です。
年利10%程度の高クーポンが謳われていますが、ある一定水準まで株価が下落すると低クーポンまたはゼロクーポンとなり、満期償還時には株価が下落した分だけ目減りした額で元本が償還されるという仕組みとなるような商品が代表的な例です。
また、株価が上昇した場合は元本が早期償還される条項がついているものが一般的で、その場合は株価上昇のキャピタルゲインを得ることができません。すなわち、株価が上昇すれば短期間高クーポンを受取って元本が償還されるがキャピタルゲインは得られず、株価が下落すれば低クーポンまたはゼロクーポンとなり、その上キャピタルロスを蒙るという商品です。
債券に、リスクが高いとされる株式オプションの売り取引を組み込んだ金融商品で、高クーポンの源泉は、債券の利回りというよりも、オプションの売り取引の対価(オプション取引のリスクを引き受けた対価)と考えるべきです。
他社株転換債は、通常の「転換社債」とは違って、株に転換するかどうかを決める権利オプションは発行体が持っています。つまり、発行体が持っているオプションの価値の分だけ、投資家は損をしていることになります。転換社債とまったく逆ですから、転換社債のイメージで手を出すと痛い目に遭ってしまうでしょう。
日経リンク債
契約書には、「早期償還条項付日経平均連動デジタルクーポン債券」などといった名前が書かれています。
他社株転換債と商品性はほぼ同じですが、日経平均という株式インデックスに連動している商品です。
高クーポンが謳われていますが、ある一定水準まで日経平均が下落すると低クーポンまたはゼロクーポンとなり、満期償還時には日経平均が下落した分だけ目減りした額で元本が償還されるという仕組みとなるような商品が代表的な例です。
また、日経平均が上昇した場合は元本が早期償還される条項がついているものが一般的で、その場合は株価上昇のキャピタルゲインを得ることができません。すなわち、日経平均が上昇すれば短期間高クーポンを受取って元本が償還されるがキャピタルゲインは得られず、日経平均が下落すれば低クーポンまたはゼロクーポンとなり、その上キャピタルロスを蒙るという商品です。
債券に、リスクが高いとされる株式オプションの売り取引を組み込んだ金融商品で、高クーポンの源泉は、債券の利回りというよりも、オプションの売り取引の対価(オプション取引のリスクを引き受けた対価)と考えるべきです。
金利型
金利の動向によって、クーポンや償還年数が変動する商品です。債券に金利オプションの売り取引を組み込んだ金融商品です
マルチコーラブル債
債券を繰上償還できる権利が付いた権利(オプション)を発行体が持っている商品です。
金利が低いと繰上償還されることになり、投資家は当初見込んだ利回りでの運用ができなくなるという不利な面があり、その分、当初の金利設定が高めに設定されています。
レンジアクルーアル債
契ある金利水準がある程度の日数続けば、それに応じて受取利息が決定するという商品です。
CMSスプレッド債
長期金利と短期金利の金利差に連動する商品です。
長期金利と短期金利の差が拡大すれば受取利息が増えるといったもので、いろんなタイプの商品が開発されています。
ターン債(TARN=TargetRedemption債)
受取利息が累積して、ある一定の水準に到達したら、その時点で期限前償還するという商品です。
長期金利と短期金利の差が拡大すれば受取利息が増えるといったもので、いろんなタイプの商品が開発されています。
投資家の方に申し上げたいこと。
もし何か問題を感じておられるのであれば、問題解決の第一歩は、ご自身が買われた金融商品の正体は何なのかをきちんと理解することが大切です。
詳しい人に相談したり、調べてみることをお勧めします。
【佐藤哲寛のデリバレポートVol.17】
米国では「仕組債」販売時に時価評価額を開示が義務付け、日本では?
米国では、昨年秋に、「仕組債」と呼ばれる金融商品を販売する際に、
時価評価額を開示することが、実質的に義務付けられたそうです。
米金融当局(SEC)は、契約時の時価が投資判断に有益だ
(あるいは、そうしないと劣悪な金融商品の販売に歯止めがかからない)、
ということを認めているということでしょう(当然の話ですが)。
【佐藤哲寛のデリバレポートVol.16】
『週刊エコノミスト』11月5日「相続とお金のトラブル」
他社株転換債とは、あらかじめ選定した銘柄の株式で償還されること
がある債券で、株式オプションと社債を組み合わせた投資商品です。
その中で、いくつかの銘柄のうち最も値下がりした株式で償還される
という「最悪シナリオ選択型」他社株転換債を取り上げました。
【佐藤哲寛のデリバレポートVol.15】
『他社株転換債』判例研究セミナー開催のお知らせ
本仕組債は、株式プットオプションの売り取引と
社債を組み合わせた商品ですが、
オプション売り特有のリスク・リターン構造を持つ上に、
複数銘柄からワースト銘柄を選択されることで、
通常の株式投資からは学び得ることのできない
タイプのリスクを負うことになります。
【佐藤哲寛のデリバレポートVol.14】
『週刊エコノミスト』
特集:仕組み債残酷物語に「仕組債」の商品性分析を寄稿
7月8日発売の『週刊エコノミスト』7月16日号で、
「仕組み債残酷物語Ⅱ」という特集が組まれ、
その中の2ページを使って「株価連動債」と呼ばれる
仕組債の商品性について解説をさせて頂きました。
株価連動債とは、利率や元本の償還金額が特定の株価や
株式指数に連動するという、よく売られている金融商品です
【佐藤哲寛のデリバレポートVol.13】
『為替デリバティブ取引のトリック』の続編を出版します
【佐藤哲寛のデリバレポートVol.11】
北陸銀行、為替デリバで行政処分
【佐藤哲寛のデリバレポートVol.10】
増加する為替デリバの訴訟案件